Hey! Say! JUMPのアルバム「H⁺」の1曲目、「She's Amazing」の歌詞について今回は考えたい。聴けば聴くほどHey! Say! JUMPの想い、アイドルとしての在り方が色濃く表されていると感じる。具体的にどの点が、と言うのを説明するに当たって140字に納めようとしたが無理だった。
今回紹介する「She's Amazing」は各サブスクにて配信されている。僕には1円も入らないので、安心してHey! Say! JUMPのことを想って聞きまくって欲しい。
She's Amazing - song by Hey! Say! JUMP | Spotify
タイトルにもある「She」は三人称
「僕/私」が一人称、「君」や「貴方」が二人称であるのに対し、タイトルや歌詞で使われている「She」はこれらより距離を感じる三人称である。しかし、聴けば一発で「She」が誰を指しているのか分かる。紛れもなく、聴いている自分自身、貴方自身が「She」だ。聴いている人の性別なんて関係ない。
例えば2番のBメロ終わり、光くんのパートでモチーフとされる「白雪姫」。Disney版のこの物語では序盤で白雪姫は王子様と出会うが、一旦別れる。王子様はきっと白雪姫を思い浮かべる度に"She's Amazing(あの人は素晴らしい)"となるだろう。
"was"ではないのも割とミソだ。王子様の中でプリンセスの素晴らしさは現在形だろう。この歌詞における王子様は歌っているHey! Say! JUMP、会えない間も歌を聴く人のことを考えて止まない最高のアイドルだと思うと本当に鳥肌である。
アイドルという点で三人称の絶妙な距離の「遠さ」が浮き出る効果もある気がする。親しみやすさを履き違えない、あのアイドル特有の遠さは三人称で表現するに値しかしない。どこまでも王子様で、アイドルだ。
そして他の歌詞では「君」という二人称が使われる。ここでグッと距離が縮まる、或いはそう勘違いさせる。王子様は本当にいた。アイドルは一瞬、偶像じゃなくなる。
これらを勝手に踏まえて聴いてみるとどうだろう。こんなにも近い三人称は無い。そんな気分にHey! Say! JUMPはさせてくれるのだ。
登場するキャラクターと歌詞におけるその位置
前述の白雪姫の他に「美女と野獣」や「眠れる森の美女」を彷彿とさせる歌詞もある。ただ、ここでははっきりと人物名が出てくるキャラクターについて触れていきたい。該当するのは「Tinker Bell(ティンカーベル)」、「シンデレラ」、「Mermaid(人魚姫)」、「かぐや姫」だ。
この4名を歌詞のブロックに分けて2パターンの役割を担っていると考える。Bメロで出てくるのがティンカーベル、人魚姫でサビで出てくるのがシンデレラとかぐや姫だ。こう分けるとそれぞれに共通点が見えてくる。
まずはBメロに出てくるティンカーベルと人魚姫から共通点を探す。この両名は「ある条件下で消えてしまう」という共通点がある。ティンカーベルは魔法の粉が無くなると力尽き、人魚姫は魔女の呪いなど扱われる媒体で理由が変わるが、Disney版以外で最後は泡になってしまう。
つまり、「いつか消えてしまうかもしれない」という儚さを歌っている人が憂いているのだ。消えてしまわないように大切にしたいのか、消えてしまうと分かっているから大切するのか。その辺は想像の余白があるからとんでもない。
次にサビに出てくるシンデレラとかぐや姫、この御二方は「物語の重要な部分で帰らざるを得なくなる」という共通点を持つ。これをライブで歌われたらどうだろう。帰らなければならないのは聴いている側にも言えることだ。
でも王子様はまた会おうとして探してくれる。ライブをまたやろうとしてくれている。そのためにならかぐや姫を月まで追いかけようとしている歌詞がある。
間奏部分では森だけでなく、海も汲まなく探している。前述の人魚姫のくだりを思い出す。此方が泡になったって探してくれそうなHey! Say! JUMPをまた愛してしまう。
大サビ前の"To you"
大サビ前でたった2回、でも重要な位置で"To you"と出てくる。自分は"to"という前置詞にやられた。何故なら、"for"ではなく"to"が使われているからだ。
"to"と"for"の使い分けはこれだけ言っている自分自身もしょっちゅう間違える。その使い分け方の1つは「相手が必要な動詞かどうか」である。相手が必要な場合は"to"を使うのだ。
"for"を使ったとて謙虚さが感じられて良かったかもしれない。でもずっと一緒にいる為に毒りんごを食べるような王子様はこんなにも聴き手に訴えかけている。"to"を用いて、強く。
前置詞1つとったってこんなに考察しがいのあるこの曲。本当にとんでもない。なのにアルバムの1曲目なんだから、もはや恐ろしい。
所感
3つ前のアルバム「Fab! -Music speaks.- 」では各童話をモチーフに1曲ずつ作られるという、はいはい絶対みんな好きなやつ!! なテーマを繰り広げたHey! Say! JUMP。その1つ前のアルバム「Parade」でもファンタジー要素を得意としていた。そんな彼らが「出来ること」をまた細部までやって飽きないのだから良い。
最高到達点を毎度更新することの難しさったらない。でもいつもこれからもこの人たちなら簡単にやってしまうのでは無いかという予感は、今アルバム2曲目「Donkey Gongs」のダンスからも伺えた。この曲も然り。
本当は薮担として大サビの薮くんのフェイクの素晴らしさだとか、そういうのについても書きたいがここで筆をおきたい。書きたいだけ書いたので、あとはとにかくこの曲を、アルバムを聴いて欲しいからだ。誰もがプリンセスになれるし、Hey! Say! JUMPはいつまでも王子様でアイドルだ、と夢にまで見た夢を1人でも多くの人が見るべきだと本気で思っている。
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