鮫が空を泳ぐ時

飛行機にはできなくても、貴方はきっとできる。

もしも3回唱えられたなら~薮くん新ソロ曲「流星の詩」聴いてみた

2018年8月22日に発売されたHey! Say! JUMPのアルバム『SENSE or LOVE』にグループ史上初となるメンバーによるソロ曲が収録された。今回はその中から薮宏太くんの『流星の詩』を歌詞だけでなく各媒体で繰り広げられた薮くんのこの曲に対する思いを参考にしたりCDと実際のライブでの歌唱を聴き比べるなどして、この曲を通しての薮くんの魅力をできるだけまとめたい。


とは言ってもまずは聞いて欲しいのが本音だけどどうしても声に出して言いたい薮くんの素敵なところが聴けば聴くほど出てくるのでつらつらと書いていくことにする。


  • 曲調

王道のミディアムバラード、と言いたくなる感じのテンポに少し暗めなメロディが乗る。イントロはアコースティックギターの音で始まる。そこに最初に加わるのは他の楽器の音かと思いきや、薮くんの声。

逢いたいのさ


その後にようやくビートを刻むパーカッション系の音、ピアノ、バイオリンなどの弦楽器、電子音が歌っている人の気持ちが膨らんでいくかのように加わっていく。その膨らんだ気持ちのまま、音を連れてAメロは繰り広げられる。


(彩りを)解き放て

(温もりを)思い出す


各Bメロ終わりで少し他の音が止まり、また薮くんの声で歌われるこの歌詞から新たなフレーズが始まり、そこから一気にサビへと入る。


サビでは母音を意識して子音を優しく歌ういつもの薮くんの歌い方がソロ曲だからか強調されている。先述のBメロ終わりで一気に声が抑えられるので1番のA、Bメロよりも声量をかなり感じられる。また抑えるのか、と思うと2番の始まりはその熱量のまま薮くんは歌い直す。他の音との兼ね合いだけでなく、薮くん自身の声量との駆け引きでさらに曲の主人公の気持ちが高揚していく様子が鮮明に表現されていく。


ずっと ずっと 僕は 君のこと
愛してるから


本来歌において「い」の母音は強調するとひらべったく聞こえるので抑えて歌うべきだけれどここと各サビの薮くんはわざと強調して「い」が母音にくる文字を歌っているのではないかというぐらい際立って聞こえてくる。多分、言葉や歌詞を大切に歌おうとした結果だと思う。ここの何がすごいかというと、全然ひらべったくなく自然に聞こえてくるところ。


最後の大サビは薮くんの声にまた別の薮くんの声が重なる贅沢な時間。サビの歌詞を歌う薮くんも違うメロディを歌う薮くんも声量がすごいのに力んでなくて可能な限りずっと聴いていたいほど心地よい。


全体的に薮くんの声だけ、或いはそこにギターかもしくはピアノが加わる、という箇所が随所にあって薮くんの歌声が如何に信頼されてるかや曲の芯として成り立つものとされてるのかがこの曲で証明且つ堪能できる…とんでもない人を自担にしてしまった……(白目)。

  • 歌詞


今回のソロ曲は作詞ではなくあくまで薮くんがこの言葉が欲しいとリクエストという形で歌詞が書かれたという。そのため薮くんの大好きな宇宙、天文、星にまつわるワードが多く散りばめられてる。


でも普段言葉を大切にする薮くんらしいフレーズもちらほらある。

君が流した 星の雫
胸に溶けていくよ


恐らくの意味である涙、と言わないのが普段ネガティブな言葉を使わないことを心がけている薮くんならではの言い回し……って本当に作詞してないの?ええ?となる。


また、直接的にネガティブな言葉のあとには必ずポジティブな意味を持つ歌詞がきている。

儚い想いは 何度でも 僕が受け止めよう
君の悲しみを 共に越えていこう


過去に薮くんは雑誌で度々この歌詞のようなことを言っていた。2016年4月号のWINK UPで「弱音を吐かない女の子に何か言うとしたら?」というのをポーズで表現する企画で片手を差し伸べて「もう大丈夫だよって言う」「僕が全部受け止めるから、って意味」と答えている。また、先日発売されたDUET2018年10月号では「寂しそうな女の子を見た時どう思う?」という質問に対してほかのメンバーが口々に言う中、薮くんは「そう思わせたら謝ると思う」と回答している。そんな薮くんだからこそ歌えるフレーズ、それがまさにここだ。


それと当方が気になったのは「逢いたい」と「会いたい」、2つの同音異義語の使い分けだ。

「会いたい」と囁いた 彗星の願い
夢の中でも逢いたくて


聴いているだけだと分からないけれど「会いたい」と「逢いたい」が歌詞中に混在している。何か意図があるのならぜひ探りたいと思った私は中学生以来〇年ぶりに漢字辞典を開いた



自分でもここまでやる……?と思ったけどやった甲斐がありました。やっぱり「会いたい」と「逢いたい」で意味が違うらしい。


「会う」は人と人が会う、顔を合わせるという意味の他に「謝恩会」や「送別会」などに使われるようにたくさんの人に会う、という意味で使われる。その人と日時を決めて会う、という場合もこちらが正しいなど広く使われている。


一方「逢う」は両方から会いたいと思って、来て、出会うことを意味するらしい。「会いたい」と自分も相手も囁くことで、初めて彗星の願いは叶うという。自分も相手も「会いたい」と思うことで見ることのできた夢の中で薮くんは「逢いたい」のだ。自分が「会いたい」ということとはまた別に、それ以上に、相手にも「会いたい」と思ってもらうことを強く望んでいるのだ。



歌詞を見る限りこの歌に出てくる主人公と君の2人は両思いだけれども主人公の方は「会いたい」と思っててほしいと考えてしまうほど「相手に好きでいてもらっている自分」に自信を持てていない。この曲の切なさはここに込められている気がする。



そしてよく考えて聞いたらこれってライブのこと…?と思う節が多々ある。


遠い銀河で 瞳見つめ合えたら始まるストーリー


よくライブ会場で暗転した際、ペンライトの明かりだけが付いている景色を見ると星空みたいに見えることがある。その中で薮くんに見つけてもらえたファンの人…そんなふうにもこの歌詞は捉えられる。薮くんも同じようにペンライトの景色を感じていたのだろうか……。だったらいいな論。


また、もしライブのことを話しているのだとしたら「会いたい」の日時を決めて会うという意味にも適う。「逢いたい」に関してはもう、ただのロマンである(白目)。


  • 『流星の詩』について語る薮くん


ツアーグッズであるパンフレットでは過去に何度もJUMPの曲を作詞してきたが今回は歌詞を書かなかった理由について言及している。

ソロで自分の考えにとらわれ過ぎるのは違う気がして、今回は自分で歌詞を書かずに作詞家さんにお願いしました


アルバムにはJUMPのメンバーで歌う曲、他のメンバーのソロ曲も収録されている。それらとのバランスを見たりここで主張しすぎないあたり、デビューしてから培った統率力というのも感じる。



また、曲に関しては

純粋に歌いたい曲を歌わせてもらいました。(中略)まずは一つの曲として成立させることを優先したかった。今回みたいなマイナーコードのミディアムバラードって(中略)寂しい曲になりがちで。でも、あえて希望が持てるような歌詞にしたんだよね。切ない音にポジティブな詞をのせることで影が見える、そのバランスも面白いと


夜中に突然家を飛び出してミスチルを聴くような人だ、センチな曲に自分の悩みだとかを昇華しないとやっていけない時もあるのだろう。そういうことが誰にでもあることを薮くんは知っていてくれているのだろう。自分だけ、と腐らず前を向こうとしてくれること、そしてその機会を、ミディアムバラードで寄り添いつつ今度は与える側になってくれたこと、また私は薮くんに感謝することが増えた。


パンフレット内で気になった部分がもう1箇所ある。

人の気持ちに寄り添うことをより大事にするようになりました。(中略)ただ、めちゃくちゃ疲れて、2倍はぐったりするのがデメリットだけど(笑)。きっと、アーティストならこれを曲にするんだろうな

この言葉の裏を返せば薮くんは自分がアイドルであるこを自覚しているという意味にも捉えられる。新しいアイドル像を創る力は薮くんにあるのではとも思いつつ、「恋愛は御法度であるアイドルが歌う『流星の詩』を恋愛対象に成り得ない、してはいけないファンが聴く」という構図により込められた切なさがより一層引き立てられ、この曲が曲として成り立つのだと痛感させる発言だ。薮くんは満点のアイドルで、それを貫こうとするすごい人だ。


  • ライブで魅せた『流星の詩』


過去のユニット曲同様に前後曲の衣装で登場した薮くん。でもルーズな白いシャツに黒地のパンツとシンプルな服装がまたこの曲に合う。薮くんのためだけに作られた衣装で歌うことも望んだが薮くんは飾らなくても薮くんで、その存在感を存分に発揮できることを再確認できたから◎。


くるくる回るセンステを、ファンの方の方向を向いて歩き回りながら歌う薮くん。その姿はまさに誰か大切な人を探しているようでグッと切なくなる。知念さんがそばでコンテンポラリーとリリックダンスを混ぜたようなダンスを踊ってくれることによって双方が捉える歌詞の切なさをより感じとれる。今回のセンステは矢印魂のようにブロック状に上下移動もするのでたまに階段になった道を薮くんが上ったり下ったりすることでその歩数の距離すら必死に逢いたいと思っての行動に見える。


歌い方としてはCD音源以上に子音をタメていて特にnが際立っていた。このことによって格助詞「の」や「に」がハッキリ聞こえてくるため主語と目的語や述語の、言葉による関係性が伝わってくる。そこまで意識してたかは分からないしここまでくると自分でも難しく捉えすぎというか考えすぎかなとも思うけれど、そんな感じに聞こえたサビの2行はやはり薮くんの成せる業という印象が強い。


曲中度々立ち止まることはあったけれど、大サビの途中で歩みを止め、両手でマイクを持ち、頭を乱しながら歌う"I love you"は鳥肌モノだった。もうこればかりは今までのように言葉にできない。最も、メモは元々ぐるぐる、n、I love youのみだったのだが。


  • 終わりに

10年を超えるグループなら、もっと決定的な個性や強みをもっていなきゃいけないし、グループのクオリティーもより上げなきゃいけない。だから、11年目はもう1段階成長した自分たちを体現したいなって

俺以外の誰もできないことを探していきたいし、やっていきたいよね

パンフレット、1万字インタビューでこう言う薮くんのソロ曲が『流星の詩』でよかったなー…、と。JUMP全体のバランスを俯瞰して見て出来た曲であっても、自分が作詞した訳では無い曲であっても、薮くんは薮くんらしさを出せる人なのだと気づけた。薮くんが大事にしたい個性を、また確立する瞬間に出会えた。



正直なところ、今の薮くんにはもう充分すぎるほどにこの上ない幸せをもらっていると感じられることの方が最近は多い。Hey! Say! JUMPのレギュラー番組・いただきハイジャンプ(フジテレビ系列)では春からロケに行くだけではなく進行役を務めることになり、同じく隔週レギュラー番組であるリトルトーキョーライフ(テレビ東京系列)で歴史をテーマにする回では遂に薮くんの歴史好きが高じて甲冑を着用するようになった。しかも胴、小手、脛当てとパーツが増えていく仕組みだ。同じJUMPのメンバー・八乙女光くんと伊野尾慧くんがDJを担当するらじらー!サタデーに今年だけでも3回出演している。今年6月16日土曜日はいたジャンで薮くんがロケ担当回、らじらーに出演、さらに日刊スポーツの企画「サタジャニ」にも載り、正真正銘のウィークエンダーとなった。滝沢電波城にも2週に渡って出演、裕翔くんと男性向けファッション誌のMEN'S NON-NOにも載るなど今年は薮くんの名前を目にすることがコンスタントにあったように感じられる。何より薮担にとって嬉しかったことは、薮くんのサッカー好きが高じて審判4級の資格を取ったこと、常連となりつつあるWOWOWクラシコ特番に出演したことが挙げられるだろう。


しかしながらこのセクションの出だしで引用した薮くんの言葉を見返す限り、薮くんは常に上を目指していることがわかる。甲冑を着れば「まだ兜は貰えてないんですけど」と言う。進行役をやれば「もっとすぐに良い言葉が浮かぶようになりたい」と言う。サッカー審判員4級を取れば「3級も取りたい」と言う。自分が「会いたい」と思っている人に「会いたい」と思ってもらうことを望む人の気持ちに寄り添った歌を堂々と歌う。「自分を好きでいてくれる人のために歌もダンスもお芝居も上手くなりたい」とライブをやりきった後の挨拶で言ってくれる。薮くんは今以上の自分になることに対してすごく貪欲な人なのだ。そんな素敵な人に想われている気分になれる曲が『流星の詩』なのだ。



今の素敵な薮くんから、今以上に素敵になった薮くんに、私も逢いたい。